2026年5月28日木曜日

あったら国宝級の鏡

あったら国宝級の鏡

もしも、あったら国宝級の鏡があるとしたら、
それはきっと、ただ姿を映すだけのものではないと思う。

朝の光を受けると、
表面に金色の波紋がゆっくり広がり、
夜になると、月の光をためこんだように、
静かに青白く輝く。

縁には、古い時代の職人が彫ったような、
細かな龍や花、雲の模様が刻まれている。

派手に輝くのではなく、
長い年月を越えてきたものだけが持つ、
深くて静かな存在感がある。

その鏡をのぞきこむと、
今の自分の顔だけでなく、
どこか遠い時代の景色まで、
うっすら映り込むような気がする。

古い屋敷の奥の間。
畳の上に置かれた低い台。
その上に、布に包まれて大切に置かれている一枚の鏡。

誰かが軽々しく触れるものではなく、
見る前に少し息を整えたくなるような、
そんな空気をまとっている。

もしその鏡が本当にあったなら、
毎日使うものではなく、
人生の節目にだけ、そっと向き合うものかもしれない。

迷った日。
何かを決める前の夜。
忘れかけていた大切な気持ちを、
もう一度思い出したいとき。

その鏡の前に座ると、
言葉では聞こえない声が、
心の奥に静かに届く。

「急がなくていい」
「本当に大事なものを見なさい」

そんなふうに、
鏡の向こうから教えてくれる気がする。

国宝級という言葉は、
値段が高いという意味だけではなく、
長い時間を越えても、
人の心を動かし続けるものに使いたい。

美しさ。
静けさ。
祈り。
そして、そこに込められた人の手のぬくもり。

あったら国宝級の鏡。

それは、持っているだけで満足するものではなく、
見るたびに、自分の心の奥まで映してしまう、
少し不思議で、少し怖くて、
でもとても美しい宝物なのだと思う。


ここまで読んでくれて、ありがとうございます

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