2026年7月16日木曜日

アサガオの回廊

アサガオの回廊

夏の朝、まだ町が目を覚ます前に、細い道を歩いていた。

古い木造の家と家のあいだに、青や紫のアサガオが咲いている。

長く伸びたつるは竹の支柱や軒先へ絡みつき、道の上に緑色の屋根を作っていた。

そこはまるで、夏のあいだだけ現れる小さな回廊だった。

葉の隙間から差し込む朝の光が、石畳の上に揺れている。

昨日の夜に降った雨が残っているのか、葉の先には透明な雫が光っていた。

アサガオの花は、どれも同じように見えて少しずつ違う。

深い青色の花。

淡い紫色の花。

白い筋が星のように広がった花。

ひとつずつ眺めながら歩いていると、いつもの短い道が遠くまで続いているように感じられた。

風が吹くたび、葉が重なり合って小さな音を立てる。

その向こうから、まだ姿の見えない蝉の声が聞こえてきた。

夏は暑くて、少し疲れる季節でもある。

けれど、朝の涼しい時間にだけ見つけられる景色がある。

強い日差しが訪れる前に咲き、昼が近づくころには静かに花を閉じてしまうアサガオ。

美しい時間が短いからこそ、もう少しだけここにいたいと思った。

回廊の出口には、明るい青空が広がっている。

振り返ると、無数の花がこちらを見送っているようだった。

来年も同じ場所に、この回廊ができるとは限らない。

つるの伸び方も、咲く花の色も、きっと少しずつ変わってしまう。

だから私は、今朝の景色を忘れないように、ゆっくりと目に焼きつけた。

アサガオの回廊は、何かを急いで手に入れるための道ではない。

立ち止まり、涼しい風を感じ、今日という一日を静かに始めるための道なのかもしれない。


ここまで読んでくれて、ありがとうございます

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