2026年6月4日木曜日

七色に光る川

七色に光る川

もしも、七色に光る川があったら。

たぶん私は、見つけた瞬間に足を止めると思います。

ただの川ではありません。

水が流れるたびに、青、紫、金色、緑、淡い桃色がゆっくり混ざって、まるで空の光をそのまま溶かしたようにきらめく川です。

昼に見ると、太陽の光を受けて明るく輝きます。

夜に見ると、月明かりの下で静かに発光して、あたりの草や石まで少しだけ七色に染めます。

そんな川が本当にあったら、観光名所になるどころではありません。

たぶん、世界中から人が見に来ると思います。

でも、私が欲しいのは、たくさんの人でにぎわう観光地としての川ではありません。

ひとりで静かに見に行ける、秘密の場所のような七色の川です。

山の奥。

木々の間を抜けた先。

誰もいない細い道を歩いていくと、突然、目の前にその川が現れる。

水の音は静かで、派手に流れているわけではありません。

けれど、水面だけが不思議なくらい美しく光っている。

石に当たる水しぶきまで、細かな宝石みたいに輝いている。

川底には丸い石が並んでいて、その石も七色の光を受けて、少しだけ夢の中のものみたいに見える。

そこに立っているだけで、現実から少し離れたような気持ちになります。

七色に光る川が欲しいと思うのは、ただ美しいからだけではありません。

毎日同じような景色を見ていると、心まで同じ色になってしまうことがあります。

朝起きて、用事をして、疲れて、また眠る。

そんな日々の中に、少しだけ信じられないものがあったらいいなと思うのです。

たとえば、その川を見に行くだけで、気持ちが少し明るくなる。

何かを大きく変えるわけではないけれど、心の中に小さな光が戻ってくる。

七色に光る川には、そんな力がある気がします。

流れる水の色は、ずっと同じではありません。

見る角度によって変わります。

時間によって変わります。

天気によっても変わります。

それはまるで、人の気持ちみたいです。

元気な日もあれば、少し沈む日もある。

明るい色の日もあれば、静かな色の日もある。

でも、どの色もちゃんと川の一部です。

七色に光る川は、きっとそういうことを教えてくれる場所なのだと思います。

全部がきれいな色じゃなくてもいい。

全部が明るい日じゃなくてもいい。

いろんな色が混ざって、それでも流れていくから美しい。

そんな川が家の近くにあったら、私は疲れた日に見に行きたいです。

何も考えずに、川辺の石に座って、流れる光をぼんやり眺める。

誰かに話すわけでもなく、写真を撮るわけでもなく、ただ見る。

青い光が流れて、金色が揺れて、紫色が水面の端に消えていく。

それだけで、少しだけ心が整いそうです。

七色に光る川。

もし本当にあったら、私はそこに橋をかけたいとは思いません。

近くに大きな店もいりません。

看板も、ライトアップも、にぎやかな音楽もいりません。

ただ静かに流れていてほしい。

誰かの心が疲れたとき、そっと見に行ける場所であってほしい。

この世界には、便利なものも、速いものも、強いものもたくさんあります。

でも、ときどき欲しくなるのは、何の役にも立たないけれど、見ているだけで救われるようなものです。

七色に光る川は、まさにそんな存在です。

飲める水でもなく、渡るための川でもなく、何かを運ぶための川でもない。

ただ、心の中に残っていた暗い色を、少しずつ洗い流してくれる川。

もしもそんな川が本当にあったら。

私はたぶん、何度も見に行くと思います。

そして帰り道に、少しだけ思うのです。

明日も、なんとか流れていけそうだな、と。


ここまで読んでくれて、ありがとうございます

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