もしも、七色に光る川があったら。
たぶん私は、見つけた瞬間に足を止めると思います。
ただの川ではありません。
水が流れるたびに、青、紫、金色、緑、淡い桃色がゆっくり混ざって、まるで空の光をそのまま溶かしたようにきらめく川です。
昼に見ると、太陽の光を受けて明るく輝きます。
夜に見ると、月明かりの下で静かに発光して、あたりの草や石まで少しだけ七色に染めます。
そんな川が本当にあったら、観光名所になるどころではありません。
たぶん、世界中から人が見に来ると思います。
でも、私が欲しいのは、たくさんの人でにぎわう観光地としての川ではありません。
ひとりで静かに見に行ける、秘密の場所のような七色の川です。
山の奥。
木々の間を抜けた先。
誰もいない細い道を歩いていくと、突然、目の前にその川が現れる。
水の音は静かで、派手に流れているわけではありません。
けれど、水面だけが不思議なくらい美しく光っている。
石に当たる水しぶきまで、細かな宝石みたいに輝いている。
川底には丸い石が並んでいて、その石も七色の光を受けて、少しだけ夢の中のものみたいに見える。
そこに立っているだけで、現実から少し離れたような気持ちになります。
七色に光る川が欲しいと思うのは、ただ美しいからだけではありません。
毎日同じような景色を見ていると、心まで同じ色になってしまうことがあります。
朝起きて、用事をして、疲れて、また眠る。
そんな日々の中に、少しだけ信じられないものがあったらいいなと思うのです。
たとえば、その川を見に行くだけで、気持ちが少し明るくなる。
何かを大きく変えるわけではないけれど、心の中に小さな光が戻ってくる。
七色に光る川には、そんな力がある気がします。
流れる水の色は、ずっと同じではありません。
見る角度によって変わります。
時間によって変わります。
天気によっても変わります。
それはまるで、人の気持ちみたいです。
元気な日もあれば、少し沈む日もある。
明るい色の日もあれば、静かな色の日もある。
でも、どの色もちゃんと川の一部です。
七色に光る川は、きっとそういうことを教えてくれる場所なのだと思います。
全部がきれいな色じゃなくてもいい。
全部が明るい日じゃなくてもいい。
いろんな色が混ざって、それでも流れていくから美しい。
そんな川が家の近くにあったら、私は疲れた日に見に行きたいです。
何も考えずに、川辺の石に座って、流れる光をぼんやり眺める。
誰かに話すわけでもなく、写真を撮るわけでもなく、ただ見る。
青い光が流れて、金色が揺れて、紫色が水面の端に消えていく。
それだけで、少しだけ心が整いそうです。
七色に光る川。
もし本当にあったら、私はそこに橋をかけたいとは思いません。
近くに大きな店もいりません。
看板も、ライトアップも、にぎやかな音楽もいりません。
ただ静かに流れていてほしい。
誰かの心が疲れたとき、そっと見に行ける場所であってほしい。
この世界には、便利なものも、速いものも、強いものもたくさんあります。
でも、ときどき欲しくなるのは、何の役にも立たないけれど、見ているだけで救われるようなものです。
七色に光る川は、まさにそんな存在です。
飲める水でもなく、渡るための川でもなく、何かを運ぶための川でもない。
ただ、心の中に残っていた暗い色を、少しずつ洗い流してくれる川。
もしもそんな川が本当にあったら。
私はたぶん、何度も見に行くと思います。
そして帰り道に、少しだけ思うのです。
明日も、なんとか流れていけそうだな、と。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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