もしも、この世に一本だけ、国宝級と呼べる弓があったら。
それは、ただ矢を放つための道具ではないと思います。
長い時間を越えて、誰かの願いや覚悟を静かに受け止めてきた、特別な存在のように見えるはずです。
その弓は、古い木で作られているのに、不思議と朽ちていません。
表面には深い艶があり、光を受けると、木目がゆっくり浮かび上がります。
派手な宝石で飾られているわけではありません。
けれど、近づくだけで空気が少し変わるような、静かな迫力があります。
弓の中央には、細く美しい金の装飾が入っています。
それは豪華さを見せつけるためではなく、長い年月を大切に守ってきた証のように見えます。
持ち手の部分には、使い込まれた革が巻かれていて、かつて誰かが本当にこの弓を握っていたのだと感じさせます。
もし、この弓に物語があるなら。
戦場で使われた弓かもしれません。
神社の奥深くに奉納されていた弓かもしれません。
あるいは、誰にも知られず、ひとつの村や大切な人を守るために使われた弓かもしれません。
国宝級という言葉には、ただ高価という意味だけでは足りません。
そこには、時間があります。
人の手があります。
祈りがあります。
そして、簡単には言葉にできない重みがあります。
この弓を見た人は、きっとすぐに欲しいとは言えない気がします。
美しいけれど、軽く触れてはいけないような気配があるからです。
飾り物として部屋に置くには、あまりにも静かで、あまりにも強い。
まるで、こちらの心まで見透かしてくるようです。
けれど、もし自分の目の前にこの弓があったら。
一度は近くで見てみたいと思います。
木の色、弦の張り、細い装飾、長い年月を越えて残った気配。
そのすべてを、黙って眺めていたくなります。
あったら国宝級の弓。
それは、強さを見せるための弓ではなく、静かに時代を越えてきた弓です。
矢を放たなくても、そこにあるだけで物語が始まる。
そんな弓がもし本当にあったなら、きっと多くの人が息を止めて見つめてしまうと思います。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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