2026年6月29日月曜日

ストロベリームーンの夜景

ストロベリームーンの夜景

夜の川沿いを歩いていると、空の奥に、いつもより少しやわらかな月が浮かんでいた。

それは真っ赤な月ではなく、薄い桃色と橙色を静かに混ぜたような、やさしい色をしていた。

ストロベリームーン。

名前だけを聞くと、甘い夢のような月を想像してしまうけれど、実際に見上げた夜空の月は、もっと静かで、もっと遠かった。

川の水面には、月の光が細く伸びていた。

風が少し吹くたびに、その光はゆらゆらとほどけ、またすぐに形を戻す。

街灯の黄色い明かりも、橋の影も、ビルの窓明かりも、すべてが月を邪魔しないように、そっと夜の中へ沈んでいた。

昼間の街は、音が多い。

車の音、人の声、信号の音、店の明かり。

けれど夜の川沿いに立つと、そのすべてが遠くなる。

水の流れる音だけが、かすかに耳に届く。

その上に、淡い苺色の月が浮かんでいる。

何か特別なことが起きたわけではない。

誰かと約束をしていたわけでもない。

ただ、いつもの街の上に、いつもと少しだけ違う月が出ている。

それだけで、夜の景色は欲しくなる。

絵でも、写真でも、言葉でもいい。

この静かな光を、どこかに残しておきたくなる。

大きな月は、空の高い場所から街を見下ろしていた。

川沿いの建物は黒い輪郭になり、窓の明かりだけが小さく残っている。

橋の上を通る人影も、車のライトも、月の前ではとても小さく見えた。

その小ささが、なぜか心地よかった。

人の悩みも、忙しさも、焦りも、空に浮かぶ月から見れば、きっと一瞬の水面の揺れのようなものなのかもしれない。

ストロベリームーンの夜景が欲しいと思った。

派手な宝石のような景色ではなく、静かに眺めていたくなる景色。

誰かに自慢するためではなく、疲れた夜にそっと見返したくなるような景色。

川面に映る月明かり。

橋の向こうに続く街の灯り。

雲の縁を淡く染める、やわらかな光。

それらが一枚の夜景になったとき、そこには不思議な安心感があった。

この世界は、毎日少しずつ変わっていく。

楽しい日もあれば、うまくいかない日もある。

けれど、ふと夜空を見上げたとき、こんな月が出ているだけで、まだ大丈夫だと思える瞬間がある。

ストロベリームーンの夜景は、特別な場所にだけあるものではない。

川のそば。

橋の上。

帰り道の途中。

少し立ち止まった人だけが見つけられる、静かなごほうびのような景色なのだと思う。

淡い月明かりが、水面の上で揺れている。

街は眠りはじめている。

それでも月だけは、夜の空で静かに光っている。

あれが欲しい。

ストロベリームーンの夜景を、心の中に一枚、ずっと飾っておきたい。


ここまで読んでくれて、ありがとうございます

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